✅ ざっくり言うと
- 🔐 2027年4月(特高・高圧)と同年10月(低圧50kW未満)以降の系統接続の契約申込みから、通信・制御に関わる機器へのJC-STAR★1取得が、系統連系の事実上の必須要件になります(出典:資源エネルギー庁「分散型電源のサイバーセキュリティ対策について」)。
- 🎯 対象は「IP通信を用いる制御機器」であり、パワーコンディショナ(PCS)、エネルギー管理システム(EMS)、ゲートウェイ等が含まれます。パネルやセルそのものは対象ではありません(出典:資源エネルギー庁 電力SWG資料5)。
- 🌏 海外製パワコンを使い続ける現実的な道は主に、国内OEMブランドで★1を取得したパッケージを採用するか、海外メーカーが自社名義で取得した製品を選ぶかのいずれかです。ゲートウェイ分離や非IP化は、制度上の位置づけに注意が必要です。
- ⚖️ ★1は自己適合宣言方式で、取得自体が完全な安全を保証するものではありません。だからこそ、機器選定は契約・保証・サプライチェーンのリスク配分まで含めて設計すべきだと考えられます(出典:IPA JC-STAR 制度詳細)。
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はじめに
今回は、JC-STARが本格的に義務化される中でも、海外製のパワーコンディショナ(PCS、Power Conditioning System)を使い続けたい場合の対応策について説明していきます。
海外製パワコンは、価格競争力や特定の技術面で魅力があり、実務では引き続き採用したいという声が少なくありません。
一方で、2027年のグリッドコード(系統連系技術要件)改定により、制御に関わる機器へのJC-STAR★1取得が、系統連系の「通行証」になります。
そこで本稿では、まず何が義務化されるのかを一次情報で正確に押さえ、そのうえで、海外製パワコンを適法に使い続ける余地がある選択肢と、それぞれの法的・実務的な留意点を整理します。
なお、制度そのものの全体像は、別稿「分散型電源のサイバーセキュリティ対策とは何か。JC-STAR要件化が太陽光・蓄電池・風力・燃料電池に与える影響を整理する」で整理しました。
本稿は、そのうえで「海外製をどう残すか」という一点に絞って掘り下げるものです。
あわせてお断りしておくと、本稿は一般的な情報の整理であり、特定の回避手段を推奨するものではありません。
制度の解釈は今後の運用や通知で変わり得るため、個別の案件では、所轄の一般送配電事業者やIPA、専門家にご確認いただくことをお勧めします。
まず前提を正確に押さえる
対応策を考える前に、義務化の輪郭を確認します。
JC-STARは、経済産業省の方針の下、独立行政法人情報処理推進機構(IPA、Information-technology Promotion Agency)が運用する、IoT製品のセキュリティ適合評価・ラベリング制度です(出典:IPA JC-STAR)。
レベルは★1から★4まであり、★1は共通のベースライン要件(16項目)を満たすことを示す最低限のラベルで、★1・★2は自己適合宣言方式、★3・★4は第三者による評価・認証方式です(出典:IPA JC-STAR 制度詳細、IPA ★1適合基準・評価手順)。
系統連系で問題になるのは、このうち★1です。
適用の時期は、電源の区分ごとに段階的に定められています(出典:資源エネルギー庁 概要資料)。
太陽光・蓄電池は、特高・高圧が2027年4月、低圧(50kW未満)が2027年10月です。
風力は2027年4月(当面はゲートウェイのファイアウォール等に限定した早期適用)、燃料電池は2028年4月(PCSを用いる形式が対象)です。
そして重要なのは、規制の起点が「連系日(運転開始日)」ではなく「系統アクセスにおける契約申込み」の時期である点です(出典:概要資料)。
開発に時間を要する高圧案件では、2026年中の設計・調達段階から、適合機器を前提に組んでおく必要があります。
既設設備については、要件化前に契約申込みが完了していれば遡及適用されず、そのまま運転を継続できます(出典:概要資料)。
なぜ「海外製パワコンはそのままでは通らない」のか
ここが対応策の出発点です。
要件がかかるのは、発電設備一般ではなく、IP(インターネットプロトコル)通信を用いる制御機器です(出典:電力SWG資料5)。
パワコンは、出力制御指令の受信や遠隔監視のために外部と通信し、発電・充放電を制御する中核機器です。
つまりパワコンは、まさに要件の中心に位置する機器です。
海外製パワコンが「そのままでは通らない」のは、性能や国籍の問題ではなく、その製品(またはそれを含むシステム)についてJC-STAR★1のラベルが取得されていない、という一点に尽きます。
裏を返せば、海外製ハードウェアであっても、しかるべき主体が★1を取得していれば、適法に使い続けられると考えられます。
そこで、次章で「誰が、どの構成で取得するか」という切り口から、対応策を検討します。
海外製パワコンを使い続ける4つの対応策
対応策A:国内OEMブランドで★1を取得したパッケージを採用する
もっとも現実的なのが、この道です。
海外メーカーの高性能なハードウェアを、国内の販売・製造事業者が「日本向けモデル」として★1を取得し、国内ブランド名で供給するパッケージを採用する方法です。
この場合、適合ラベルは国内ブランド名義で交付されるため、法規上は問題なく系統連系できると思われます。
海外メーカーの価格・技術の恩恵を受けつつ、規制面もクリアしやすい点が利点になると考えられます。
一方で、実務上の注意が2つあります。
第一に、照合の手間です。
IPAの適合製品リストは、海外メーカー名ではなく「取得した国内ブランド名・型番」で登録されるため、採用予定の実機がどのブランドのどの型番として取得されているかを、必ずIPAの適合製品リストで確認する必要があります(出典:IPA JC-STAR適合製品リスト)。
第二に、供給継続とサプライチェーンの視点です。
OEM供給は、代理店契約や供給元の方針変更に左右されやすく、また後述するとおり、重要インフラ機器のサプライチェーンには経済安全保障の観点も絡みます。
対応策B:海外メーカーが自社名義で取得した★1製品を選ぶ
もう一つの正攻法が、海外メーカー自身が自社名義で★1を取得した製品を選ぶことです。
★1は自己適合宣言方式であり、海外メーカーであっても申請・取得が可能な制度設計です(出典:IPA JC-STAR 制度詳細)。
日本市場の規模を踏まえれば、今後、海外主要メーカーが自社名義での取得を進める動きは強まると考えられます。
この道を採る場合も、確認手順は同じです。
営業資料に「JC-STAR対応」と書かれていても、それだけでは足りず、登録番号、対象機器、型番、有効期間、ステータスを、IPAの適合製品リストで実機と突き合わせる必要があります(出典:IPA 適合製品リスト)。
なお、どのメーカーが取得済みかは時々刻々と変わるため、本稿では特定の社名を挙げません。
必ず最新のIPAリストでご確認ください。
対応策C:ゲートウェイ分離アーキテクチャ
技術的な工夫として、未取得のパワコンをインターネットから切り離し、その手前に★1取得済みのEMSやゲートウェイを「関所」として置く構成が語られることがあります。
この発想自体は、要件が「IP通信を用いる制御機器」にかかるという制度の建て付けと整合し得る、と考えることもできます。
現に、風力については、当面ゲートウェイのファイアウォール等に限定した早期適用とされており、通信の要所を押さえる考え方が採られています(出典:概要資料)。
ただし、この構成には重要な留意点が2つあります。
第一に、規制上の位置づけです。
資源エネルギー庁の整理では、対象範囲外の機器であっても、発電等設備に対する制御機能を有する場合や、ゲートウェイ等を介さずに主要な構成製品に連携する場合は、要件化の対象となるとされています(出典:電力SWG資料5)。
つまり、通信機能を持つパワコンについて、ソフト設定で通信を止めているだけ、という形では、対象外と認められない可能性があります。
第二に、単一障害点(SPOF、Single Point of Failure)の問題です。
ゲートウェイ1台に制御を集約すると、その1台の故障がシステム全体の制御停止に直結します。
したがってこの構成は、机上の合法性だけでなく、当局の解釈と冗長性設計の両面で、慎重な検討が必要です。
対応策D:非IP・シリアル通信専用構成
もう一段踏み込んだのが、IP通信機能を持たず、Modbus等のシリアル通信のみで運用するパワコンを選ぶ方法です。
要件はIP通信を用いる製品にかかるため、真に非IPの機器であれば、★1義務化の対象外に位置づけられる余地がある、と考えることもできます。
もっとも、この道は実務コストが重くなりがちです。
遠隔からのファームウェア更新(OTA、Over-the-Air)ができないため、不具合対応や脆弱性対応のたびに現地作業が必要になり、O&M(Operation & Maintenance、運転保守)コストが増えます。
また、海外メーカーの中にはクラウド接続を長期保証の条件としている例もあるとされ、その場合、あえて非IP運用にすると保証を受けられなくなるリスクがあると思われます。
セキュリティ確保の観点からも、非IPにすればサイバー対策が不要になるわけではなく、物理的なアクセス管理や保守時の運用管理は依然として求められます。
既設・交換と「例外措置」
海外製パワコンを使い続けたい場面で、実務上とくに問題になるのが、既設設備の機器交換です。
既設設備は、要件化前に契約申込みが完了していれば遡及適用されませんが、2027年4月以降にIP通信機器を交換する場合には、原則として交換する機器に★1取得製品が求められます(出典:概要資料)。
しかも、故障した1台の交換であっても、既設機器との互換性の問題から、他の機器まで広範に交換が必要になる場合があります。
この「過度な負担」が生じる場合には、例外的な移行措置が用意されています。
具体的には、属地の一般送配電事業者に個別相談したうえで、所定の様式による計画書を提出する方法です(出典:概要資料)。
計画書には、少なくとも次の3点が求められます。
第一に、その時点で取得製品への交換が難しい理由(過度な負担の具体的内容)です。
第二に、広範なリプレースやリパワリングの実行予定年等を示したうえで、最終的には交換対象機器のすべてを取得製品とすることです。
第三に、それまでの間、一定のサイバーセキュリティ対策を講じることです。
これは「交換を免除する」制度ではなく、「理由を示し、将来の適合時期を約束し、その間の代替策を講じる」ことを条件とした、条件付きの移行管理だと理解しておくのが正確です。
海外製パワコンを既設で使い続ける場合、この例外措置を織り込んだ更新計画をあらかじめ持っておくことが、実務的な備えになります。
弁護士の視点 – 機器選定を「契約」に落とし込む
海外製パワコンを使い続ける判断は、技術選定であると同時に、契約とリスク配分の問題でもあります。
第一に、適合性の表明保証です。
EPC(設計・調達・建設、Engineering, Procurement and Construction)契約や機器売買契約において、対象機器がJC-STAR★1を取得していること、そしてどの登録番号・型番でそれを確認するかを、契約上明確に定めておくべきだと考えられます。
第二に、ラベル失効時の手当てです。
IPAの適合製品リストでは、有効だけでなく、失効猶予、失効、自主取下げ、取消しといったステータスが想定されています(出典:IPA 適合製品リスト)。
納入後にラベルが失効・取消しとなった場合の責任分担や代替機器提供の条項を、あらかじめ設計しておく必要があります。
第三に、OEM供給の継続性です。
対応策Aを採る場合、国内ブランドの供給が継続されるか、供給元の変更時に適合が維持されるかは、案件の生命線になります。
第四に、サプライチェーンと経済安全保障です。
重要インフラである電力系統に載る制御機器については、JC-STARの適合とは別に、補助金の要件や、政府調達・重要インフラをめぐる安全保障上の論点が絡む場面があります(出典:電力SWG資料5)。
海外製、とくに特定国のハードウェアを採用する場合には、この観点も含めて、スポンサーやレンダーに説明できる整理をしておくことが望ましいと考えられます。
実務チェックリスト
最後に、海外製パワコンを使い続けたい事業者が、いま着手すべき手順を整理します。
第一に、機器の棚卸しです。
採用予定または使用中のPCS・EMS・ゲートウェイがIP通信を行うか、そしてその型番がIPAの適合製品リストに掲載されているかを確認します。
第二に、トリガーの逆算です。
高圧案件では、2027年4月より前に契約申込みを完了できるスケジュールか、それとも適合品への切り替えが必要かを精査します。
第三に、OEM構造の照会です。
海外メーカー製を採用する場合、その製品をベースとした国内ブランドの適合状況を、代理店に照会し、IPAリストの登録名義と突き合わせます。
第四に、交換・例外措置の準備です。
既設案件では、将来の故障交換で適合品への交換が困難になる可能性を見越し、属地の一般送配電事業者への相談と計画書提出の要否を検討しておきます。
第五に、契約への反映です。
適合性の表明保証、ラベル失効時の対応、供給継続、サプライチェーン安全保障の説明を、EPC・売買・O&M・ファイナンスの各契約に落とし込みます。
まとめ
2027年のグリッドコード改定により、JC-STAR★1は、系統連系のための事実上の通行証になります。
しかし、これは「海外製パワコンが使えなくなる」という単純な話ではありません。
要件はIP通信を用いる制御機器に対する適合ラベルの有無にかかるため、国内OEMブランドでの取得や、海外メーカー自身による自社名義取得を通じて、海外製ハードウェアを適法に使い続ける道は残されていると考えられます。
一方で、ゲートウェイ分離や非IP化は、当局の解釈や保守・保証の面で相応のリスクを抱えており、安易に「規制の抜け道」として扱うべきではありません。
最終的に効いてくるのは、IPAの適合製品リストでの型番単位の確認と、適合性・失効・供給継続・安全保障を織り込んだ契約設計です。
海外製を使い続けるという選択は、十分に成立し得ます。
そのためにこそ、制度の起点である「契約申込み」の時期から逆算し、機器選定を契約と資本政策に落とし込む準備を、いまから進めておくべきだと考えています。

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